第7回JPS学生技能コンペで優秀賞 繰り返しの練習で身につけた確かな技術
蔵本キャンパス
歯学部 歯学科 6年
笠井 玲緒(かさい れお)さん

日本補綴歯科学会は、将来の補綴歯科医療を担う歯学部学生の育成を目的として、臨床技能試験「Student Clinical Skills Competition(JPS学生技能コンペ)」を開催しています。2019年に始まった本大会は、第7回大会から文部科学省の後援を受け、1位入賞者に文部科学大臣賞が授与されるなど、その社会的評価を大きく高めています。学内選考を経て、全国の歯学部から選抜された6大学6名が最終選考に進出し、CAD/CAM冠用支台歯形成技術を競います。これは、白いハイブリッドレジン冠(CAD/CAM冠)を安定して装着するため、CAD/CAM機による切削加工に適した形態に歯を削る高度な臨床技能です。この大会で優秀賞を受賞した笠井さんに、大会出場の感想をはじめ、今後の目標などについてお話を伺いました。
日本補綴歯科学会HP 第7回 JPS 学生技能コンペ
https://www.hotetsu.com/c_2663.html
(「とくtalk」2026年春号掲載/取材2026年2月)
第7回JPS学生技能コンペで優秀賞に
第7回JPS学生技能コンペでの優秀賞受賞、おめでとうございます。この大会には、ご自身で応募されたのでしょうか?
笠井さん 大会への参加は、まず学内での選考があります。複数の作品の中から、細木眞紀先生が一人の学生の作品を選び、その作品が全国大会の本部へ提出されるという流れです。歯学部がある大学は全国におよそ20校ありますが、その中から選ばれた6大学?6人のみが、東京の会場で行われる本大会に出場できます。本大会では、「CAD/CAM冠用支台歯形成」技術を審査されるのですが、限られた時間の中で、どれだけ正確で完成度の高いものを作れるか、技術力だけでなく、集中力や判断力も問われる、緊張感のある大会です。
以前、山本朗仁先生の授業で歯型彫刻を作るところを見学させていただいたのですが、皆さんとても苦労されていました。そこから更に精密なものを作られるということですよね?
笠井さん そうですね。患者さんのお口の中を再現した模型を使って行うのですが、口腔内は直接見えない部分も多く、鏡を使いながら進めます。最初は思うように手が動かず、うまくできませんでしたが、細木先生の丁寧な指導のおかげで、最終的には非常に良い仕上がりにすることができました。
大会出場まではかなり練習されたのでしょうか?
笠井さん 5月頃を中心に1~2ヵ月の間、ほぼ毎日、放課後に1時間ぐらい練習していました。1日1本のペースで、その出来がちょっと良くなかったら、もう1本彫ろうかみたいな感じでやっていました。
大会では「下顎大臼歯」という指定があったようですが、どの歯が対象になるか、その場で発表されるのでしょうか?
笠井さん 事前に課題の内容は分かっていたのですが、下顎の第二大臼歯は奥から二番目の歯で、視野の確保が非常に難しい部位です。実際、奥は見えにくく、周囲の健康な歯を誤って削ることも許されません。もともと奥歯の処置は苦手意識があり、普段から重点的に練習はしていたものの、「ここは難しい」と思っていました。
その難しさはどんなところでしょうか?
笠井さん 大臼歯は歯自体が大きく、制限時間の30分以内に削り終えなければなりません。練習を始めたばかりの頃は、2時間かけてようやく形になるという状態でした。一方で、小臼歯のように歯が小さければ簡単というわけでもありません。小臼歯の場合は削るスピードは速いものの、少し削りすぎると修正が難しく、直そうとするほど歯がどんどん小さくなってしまいます。歯の種類によって、それぞれ異なる難しさがあります。
これまで補綴学会主催で行われてきた大会が、第7回大会から文部科学省の後援を受けることになり、1位入賞者には文部科学大臣賞が授与されるなど、大会の位置づけや社会的評価が大きく高まったと伺っています。
笠井さん やっぱり今までとモチベーションが違いますね。他大学から参加した5人もかなり練習したと言っていました。
結構、緊張されたのでは?
笠井さん 例年だとかなりの緊張感の中で行われていたそうですが、第7回に出場した6人は大会前日に行われた情報交換会を通して自然と打ち解け、とても仲が良くなりました。当日も実技が始まる前に「円陣組みますか!」「頑張ろう!」と声を掛け合って取り組みました。それぞれがこれまで努力を重ねてきたからこそ、「お互いに良いものを作ろう」という前向きな雰囲気があり、大会後もLINEグループでやり取りを続けていて、今でも良い関係が続いています。さまざまな大学の学生とつながれる点も、この大会の大きな魅力だと感じました。

繰り返しの練習で身につけた確かな技術
笠井さんはもともと細かい作業が得意なタイプなんですか?
笠井さん 不器用というほどではありませんが、かといって特別に器用なタイプでもないと思っています。学内選考に向けて最初に集まって練習していた頃は、細木先生からも「決して飛び抜けて良いわけではなかった」と言われていました。歯型彫刻の授業も山本先生に「全然彫れてないよ」と言われたこともあります(笑)。
そうなんですか!意外ですね。
笠井さん 周囲の人にコツなどを聞きながら練習を重ねるうちに、少しずつ感覚をつかめるようになりました。もともと器用さで勝負するタイプというよりは、繰り返し練習して課題を乗り越えていくタイプだと感じています。
笠井さんが見つけた「上手く作るコツ」はどういうところでしょうか?
笠井さん 歯の形をしっかり覚えることです。練習の中で「これが一番きれいだ」と評価されたものを模型から取り出して確認し、「この面にはこの山がある」「ここにはこうした隆線ができる」といった形を頭に入れていきました。練習で何本も彫るうちに動きが自然と身につき、最終的には作業をルーティーンとしてこなせるようになったことも大きかったと思います。
なるほど。今年もまた大会へ出場される予定ですか?
笠井さん 練習には参加しようと思いますが、エントリーはしないと思います。来年度は6年生なので(※取材時は5年生)、国家試験に向けた勉強も本格化しますし、部活にも力を注ぎたいので、後輩たちに挑戦してもらって、さらに良い成績を残してもらえたらと思います。
部活は何をされているんですか?
笠井さん 軟式テニスです。
部活での目標をきかせてください。
笠井さん 毎年8月に「オールデンタル」という全国の歯学部の学生の大会があります。2年前に優勝したんですが、去年が準優勝だったので、もう一回「優勝を取り返す」という目標に向けて頑張っています。あと個人の最高成績も去年の5位だったので、それ以上を目指しています。
最後に新入生に向けてアドバイスをお願いします。
笠井さん 臨床で実際に患者さんを診るようになって感じるのは、まずは健康な状態の歯を正しく知っておくこと、それがとても大切だと思います。新入生の頃は教科書での授業が中心で、「歯学部で学んでいる」という実感が湧きにくいかもしれませんが、歯の形を含め、基本的な内容を理解しておくことが、後で活きてきます。そうした基礎的な知識は、さまざまな場面で確実に必要になりますので、今のうちにしっかり身につけておくといいと思います。





