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【T-PEAKS】第2号発行:松木 均 研究担当理事インタビュー

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徳島大学研究支援?産官学連携センターHPで連載がスタートした「T-PEAKS」。第2号は松木 均研究担当理事?副学長へのインタビュー記事です。松木理事には「地域中核?特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」で掲げる10年後のビジョンの実現に向けた研究拠点として設置された「フォトニクス健康フロンティア研究院(IPHF)」のCEO(最高経営責任者)として、IPHFの現状や今後の取組についてお話しいただきました。今回の「とくだいウェブ」では、ボリュームがありすぎて「T-PEAKS」には載せられなかった、ご自身が若手の研究者だった頃のお話を、ほぼノーカットでご紹介します。

(取材/2026年2月)

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徳島大学での研究活動のはじまり

松木理事:自分の研究者としての話をしますけれども、大学院の頃は海面活性剤で分子集合体の研究をしていました。私の直属の先生ではなく、教養部の先生が徳島大学にこれからできる生物工学科の教授として赴任することになり、一緒に来ないかと誘われたのでついてきました。その先生は温度と圧力の専門家で、「膜内部の温度と熱測定をやってくれないか」と言われたので、徳島大学では生体膜のリン脂質の二重膜に圧力をかけるというような実験をやっていました。

海外の研究グループに先に発表されてしまったが

松木理事:1990年ぐらいのことですが、リン脂質の二重膜に圧力をかけると、ある条件下で相互貫入するという現象が見つかりました。(身振り手振りで示しながら)こういった状態が、溶媒を変えるとこういうふうになるっていう。
井貫准教授(インタビュアー):ちょっと「クシュッ」となるのですか。
松木理事:圧力をかけても、そうなることを私の先代の先生が、結構いち早く見つけていました。ここからは言い訳になってしまいますが、私が徳島大学に異動することになり、海外の研究グループに先に発表されてしまいました。研究というのは先にやることに一つの価値があるので、少しがっくりしましたが、私は、研究というのは「先にやること」だけではなくて、「丁寧に正確にやること」と「継続すること」がすごく大事だと伝えたいです。
海外のグループが出したデータは、論文に引用されたりしましたが、色々な間違いがあり、完全に正しいわけではなくて、全体をとらえていなかったりしました。私が留学したりして、少し離れて、帰ってきて、またそれをやりだして、私が准教授の2005年ぐらいに、大学院生と私でその状態を完全決定することができました。それからは我々のデータが引用され始めて、海外のグループのデータが置き換わってしまいました。
私はその時、たとえ先に人がやったとしても、自分の考え方を大切にするというか、諦めないでずっとやることが重要だと感じました。
 

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米国留学時に麻酔作用論争に巻き込まれる

松木理事:印象に残っている研究がもう一つあってですね。生体膜に薬が対応する代表的なものに麻酔薬があります。その当時、麻酔薬が、膜タンパク質に効くのか、膜脂質に効くのかという論争がありました。私は膜側から研究に入ったので、膜脂質に効くという立場を取っていました。そういった研究をしていたこともあり、アメリカに1年留学する機会を得たときに、膜の研究室に入りました。そしたら、これがまたね。2つの説があり、喧嘩になっていました。喧嘩をすると論争になる。論争になると勢いがあるところとそうじゃないところに分かれる。勢いがあるところというのがイギリスの大学だったのですが、そこにはポスドク(博士研究員)が30人くらいいて、圧倒的に有利な状況でした。私は片田舎のソルトレークシティにあるユタ大学にいたのですが、教授は「自分の考えが正しくて、向こうが間違っている」と言っていたので、みんな研究室からいなくなってしまい、教授と私の2人だけで実験を続けました。

真冬のソルトレークシティで実験を続けた

松木理事:世の中面白いもので、逆転する機会が巡って来ました。その時に役に立ったのが、徳島大学でやっていた圧力実験で、教授もそれを知っていて私を呼んだと思います。麻酔がかかっていても、圧力をかけると覚醒します。例えば、オタマジャクシにエタノールで麻酔をかけると眠ってしまうのですが、そこにキュッと圧力をかけると泳ぎだします。それを何回か繰り返すことができます。これは個体レベルですが、それをね、個体レベルじゃ分からないから、生体分子のレベルで酵素反応をやれと言われました。
そこで何を選んだかというと、蛍の発光反応を触媒するルシフェラーゼという酵素タンパク質です。麻酔科じゃないですけど、毎日毎日、研究室に行って、ルシフェラーゼに麻酔をかけて実験をしました。蛍に麻酔をかけると光らなくなりますが、圧力をかけると、また光りだします。それを再現しろと言われて、その実験をやっていましたが、最初は全く再現されなかった。それには訳がありました。皆さん、蛍を見たことありますか?蛍の光は点滅しています。光ったらすぐに消えるのは、エネルギーを放出してしまうからで、ある一定以上のレベルに行ったら落ちてしまう。落ちたところに麻酔薬を入れても光らない。そこで、エネルギーを一定にする試薬を入れてやることにしました。
井貫准教授:蛍はどうなるのですか?
松木理事:蛍が光りっぱなしになります。光りっぱなしになったところで麻酔薬を加えると、光らなくなるじゃないですか。そこにキュッと圧力をかけるとまた発光する。そういう実験をやっていて、それで最終的には酵素レベルで証明できたのですが、それが一番嬉しかったわけじゃなくて、それはもう多分できるだろうと言われていた。
実は「拮抗現象(麻酔薬の作用は圧力により抑制する)」と、もう一つの現象があり、それは蛍の麻酔とは逆の現象で、今度は圧力をかけたときにもっと光らなくなるという「圧力相乗」をおこすのが「長鎖脂肪酸」であることを見つけたのが、ちょうど今くらいの季節ですね。(インタビュー日:2026年2月6日)
ソルトレークシティは、冬のオリンピックをやるくらいですので、冬場は屋外気温が-5度くらいまで下がり、夜が長くて、午後4時頃には真っ暗です。そんな真っ暗の中で麻酔をかけて圧力をかけて、実験をやって、拮抗阻害剤でもっと効かなくなるということを初めて実証したのがちょうどこの頃じゃなかったかな。「完全に」実証できたから、その時は本当に嬉しかったですね。教授のところに走って行って、「これでいけます!」と言ったのを今でも鮮明に覚えています。
 

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今回のインタビューで、松木理事が、身振り手振りをまじえて、楽しそうに研究の苦労話を話されていたので、「とくだいウェブ」で紹介させていただきました。2026年3月4日に常三島のけやきホールでご講演された佐川眞人先生が、大学に残りたかったけれど残れず、企業では、やりたい研究をなかなかやらせてもらえなかったが、これだと思ってあきらめずに続けたことで、世界最強の磁石を発明することができたとお話されていました。
自分が納得して一生懸命やったことは、その時は本当に大変でも、後になると楽しく思い出せるものだと思います。コスパ?タイパの考え方とは真逆かもしれませんが、若い人たちには、そんな経験をしてほしいと思います。

「T-PEAKS」 編集長 武川 恵美@アラ還
研究支援?産官学連携センター 特任准教授

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■徳島大学×J-PEAKS

https://www.iphf.tokushima-u.ac.jp/

 

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