【プレスリリース】歯周病が毛細血管から物質を漏れやすくさせる仕組みを発見

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 大学院医歯薬学研究部口腔保健支援学分野の吉田賀弥准教授?尾崎和美教授、口腔微生物学分野の廣島佑香講師らの研究グループは、歯周病菌Porphyromanas gingivalis(Pg)※1)が放出する外膜小胞(OMVs)※2)が、血管内皮細胞※3)に作用して血管透過性※4)を高めることを発見しました。

 歯周病は多種の臓器に影響して、様々な全身疾患の発症?進行を悪化させます。今回私たちは、各臓器に共通である毛細血管への歯周病の影響を知るために、血管透過性に対するPg OMVsの作用を調べました。Pg OMVsは血管内皮細胞においてストレスファイバー※5)形成を誘導し、細胞の外形を変化させました。また、Pg OMVsはリソソーム※6)経路を活性化させ、血管内皮細胞間の接着分子であるVascular endothelial-cadherin(VEc)※7)を過剰に分解し、その量を減少させました。これらの結果、血管内皮細胞の細胞間隙が開き、血管透過性が高まりました。

 Pg OMVsが血管透過性を高めることが、歯周病を背景とした全身疾患発症?進行に関与する可能性が示されました。実際に歯周病患者の全身疾患発症や進行にどの程度関与するのか、今後の更なる検証が必要です。また、血液など体液中のPg OMVsを測定することで、糖尿病や認知症などの発症?進行リスクを予想できる可能性があり、検出技術の開発が期待されます。

 本研究に関する論文は、亚洲博彩十大网站排名_澳门足球博彩公司推荐【唯一授权十大网站】6年12月17日に、欧州生化学会連合(Federation of the European Biochemical Societies, FEBS) の学術雑誌The FEBS JournalのHPで先行公開されました。

【用語解説】
※1)歯周病菌Porphyromonas gingivalis(Pg):歯周病菌の一種。蛋白質分解酵素(ジンジパイン)などを産生して歯周組織を破壊するので、歯周病進行において特に病原性の高い細菌とされる。

※2)外膜小胞(OMVs):細菌の外膜からできている小胞。直径約100nmと微小で、菌由来の病原因子を多く含み、強い毒性を持つ。

※3)血管内皮細胞:血管の内腔を覆うシート状の細胞。毛細血管壁は一層の血管内皮細胞でできている。

※4)血管透過性:血液と“毛細血管周辺の組織”の間での物質移動のこと。健康な状態では、隣接する血管内皮細胞間の隙間(細胞間隙)は狭く、血管透過性は低く保たれている。慢性炎症や癌では、細胞間隙が開き、血液から血球や血漿成分が周辺組織に過剰に漏出する。この現象を、「血管透過性が高くなる」という。

※5)ストレスファイバー:細胞の外形を作るアクチンフィラメントが重合し、束状になったもの。細胞に張力を与えるので、血管内皮細胞の外形を変化させ、細胞間隙が開く原因となる。

※6)リソソーム:細胞内にある小器官。膜に包まれて分解酵素を含み、細胞内で不要になった物質を分解して除去する。

※7) Vascular endothelial-cadherin(VEc):血管内皮細胞の細胞膜上に発現する蛋白質。接着分子として隣接した血管内皮細胞同士を繋ぐことで、細胞間隙を保つ。細胞膜上のVEcは、細胞内へ取り込まれ、一部はリサイクルされつつ、リソソーム経路で分解?除去される。

【プレスリリース】歯周病が毛細血管から物質を漏れやすくさせる仕組みを発見~歯周病菌が放出する外膜小胞は血管透過性を高める~ (PDF 839KB)

お問い合わせ先

<研究内容に関する問い合わせ>

大学院医歯薬学研究部口腔保健支援学分野

准教授 吉田 賀弥
電話番号:088-633-7898
メールアドレス:kaya@tokushima-u.ac.jp

 

<報道に関する問い合わせ>

蔵本事務部歯学部事務課
電話番号:088-633-7940
メールアドレス:isysoumu2k@tokushima-u.ac.jp

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