平成25年度徳島大学入学式式辞
平成25年4月5日(金曜日)
会場 アスティとくしま
新入生の皆さんご入学おめでとうございます。また新入生のご家族や関係の皆様方に対し、徳島大学を代表いたしまして心よりご入学のお祝いとお慶びを申し上げます。
早いもので、東日本大震災から2年が過ぎましたが、復旧、復興の遅れが指摘されています。また、日本の世界における存在感が希薄になったことも指摘されています。今、東日本大震災からの復興を含め、日本の力が試されていると言えます。そして、安倍内閣が「危機突破内閣」といったように、日本人がそれぞれ危機感を持つことが重要とも言われています。
一方で、急速に進むグローバル化と並行して、社会の複雑性、多様性が進行している現状では、世界レベルで解決しなければならない多くの問題が山積しています。
皆さんには、このようなある意味混沌としている時代ですが、是非、有意義な4年間あるいは6年間、自分を見失うことなく楽しい学生生活を過ごされることを願っています。
学生生活を送るにあたって、皆さんに心がけてほしいことを3つお話します。1番目は知識に関することです。
「最近の若者たちは内向き、そして視野狭窄」と言われています。「自分の身の回り、半径3メートル以内のことしか関心がない」とも言われています。
現在、日本には緊張感が全くなくなり、今後、日本を担っていく世代に「知の衰退」が起こっていると指摘する人もいます。皆さんは小中高を通じ、多くの「知識」をつけてきました。しかし、その知識を生かしているでしょうか。「知っている」というだけでは本当の知識とは言えません。「知っていて行動できる。行動した。」という段階までいかないと知識を生かしている、知識を生かしたとは言えないのです。
一方で、知識とは専門知識に代表されるように思われがちですが、専門知識は深く幅広い教養力?教養知識に裏打ちされたものでなければ、バランスの悪い知識として物の本質を見る目は涵養できません。
教養力に関してある人は、バブル崩壊後は日本の経済だけでなく高等教育にとっても「失われた20年」であると言っています。最近は専門教育重視の傾向が強まり、教養力が衰退したと言われています。言うまでもなく教養力とは、言語、人文科学、社会科学、自然科学、数学、芸術などあらゆる分野で共通に求められる普遍的な知識を習得することにより、人間としてのあり方や生き方に関する深い洞察力を養うことです。皆さんにはこの教養力を養うことを常に心がけてほしいと思っています。
次に大切なことは「よく考える」ことです。 自分のキャリアデザインを描きながら、常に自分のビジョンすなわち自分の目的?目標の方向性は失われていないかを考え続ける必要があります。いつも考えている人は、感性が次第に磨かれていきます。感性が磨かれると「物事の判断」「何が本質か」「チャンスをとらえる力」の育成が可能になってきます。
3番目は「自分を理解してもらう力」と「他人を理解する力」が重要です。
この「理解する力」のキーワードは「論理的に表現できること、表現する」です。論理的に話をして自分の言いたいことを理解してもらう。そして相手の言いたいことも論理的に理解し、自分なりに相手の言いたいことを表現できることが重要です。他人を理解できなければ、自分の世界から除外してしまったり、相手に対し心を含め閉じてしまうことになってしまいます。
以上「本物の知識」「よく考えることができる力」「自他ともに理解する力」を身につけるようお願いします。
最後にヤフーの元CEOキャロル?バーツの言葉を贈ります。「キャリアの進歩は二次元の梯子ではなく、三次元のピラミッドを登るようなものだ。ピラミッドの端を横に動くことで、経験という土台を作ることができる。ぐずぐずしているように見えるが、この間に習得したスキルや経験が、後々いかに貴重であるかわかってくる。」
決してあくせくすることなく、ゆっくり腰を据え、自分のキャリアデザインを描きながら、有意義な大学生活を送られることを祈念して、平成25年4月5日、皆さんの記念すべき入学式に際してのお祝いの言葉とします。