研究概要

 生命現象は、多様な分子や細胞が関与する複雑なネットワークにより成り立っています。また、生体は病原体などの外来異物を検知し、多彩な応答を示します。このような生体システムの分子基盤を理解するためには、応答に関わる分子を同定し、機能を明らかにすることが重要です。我々のグループでは、化合物を精密に作り分け、自在に編集できる有機化学的アプローチを用いて、生体ネットワークに関わる鍵化合物の探索?合成に取り組んでいます。そして鍵化合物の未知なる機能を解明し、新たな治療法を開発することを目指しています。

研究内容

(1)免疫系を制御する微生物?自己由来の化合物の探索?合成と機能解析
 免疫システムは様々な免疫細胞が協働し、外来異物や自己成分を認識することで、多様な応答を示します。このような免疫システムを理解して制御するには、応答に関わる鍵化合物の見つけ出すことが極めて重要です。我々は、免疫系を制御する病原体、常在微生物および自己由来の低?中分子化合物に着目し、精密化学合成を駆使した化合物供給と免疫機能評価を通して、免疫系の制御に関わる化合物の同定を試みています。本研究を進めることで、免疫システムに関わる新たな標的?作用機序の発見、新規創薬シーズの創出などに繋がると考えています。

研究内容(1).jpg

(2)T細胞応答に関わる人工免疫制御リガンドの設計?合成と創薬展開
 免疫系において中心的な役割を担うT細胞は、抗原提示細胞上のMHC分子とそのリガンド(微生物由来のペプチド、低分子など)によって制御を受け、多彩な機能を発揮します。我々は、MHCリガンドの探索?同定を進めるとともに、同定したリガンドの構造を元にした構造展開によって、人工リガンドの創出に取り組んでいます。また、分子シミュレーションや遺伝子工学の技術も取り入れ、リガンドに新たな機能を付与することで、T細胞の機能を利用する独自の疾患治療戦略の開発を目指しています。

研究内容(2).jpg

(3)可視光応答性光触媒を用いた生体関連分子の合成と化学編集技術の開発
 可視光応答性光触媒は,ルテニウムやイリジウムを中心とした金属触媒や、有機分子で構成された触媒であり、可視光照射によって励起されます。励起された触媒は、一電子移動過程(single electron transfer: SET)やエネルギー移動(energy transfer: ET)過程を介して、特定の基質を高反応性中間体に変換します。すなわち、可視光照射という穏和な条件下、様々な化学変換反応を可能とする高反応性活性種を発生させることが可能です。我々は、可視光応答性光触媒を用いた様々な反応を開発し、生体関連分子の合成に応用することに取り組んでいます。また、本触媒系を利用した生体分子の化学修飾反応の開発も進めています。

研究内容(3).jpg

 

閲覧履歴 このページと関連性の高いページ