工業会会員の皆様の中で企業の取締役や役員等リーダーシップを執る立場にある皆様方と工学部執行部(平成28年4月1日の改組により理工学部と生物資源産業学部)や学科長(コース長,系長)らで構成される「工業会T&E 会」が1998年度に設置され,10年以上経過しました。T&Eとは「Top and Executive」を意味しており,その設立の趣旨は,相互に連携を保ちつつ,本学の研究や教育の水準を引き上げるような有形無形の協力や助言を賜りながら,一方で会員の皆様方に本学の情報を提供させていただく点にあります。平成30年度の取り組みについて報告いたします。
生物資源産業学部からは卒業生をまだ輩出していないので,本年度は理工学部が主催し前年度に引き続いて,学生のための「就職支援セミナー」を開催致しました。その後,理工学部執行部と懇談を行い,社会から見た本学の教育に対する提言をもいただきました。
第1回就職支援セミナーは,H31年1月16日(水)に共通講義棟K201講義室において,教職員?学生約50名が参加して開催されました。まず,日亜化学工業株式会社第2部門バックライト事業統括部統括補佐兼プレーンLED 開発部部長坂本考史様(化学応用工学科H8卒,H10年修了,H16年博士後期課程修了)による「就職活動を迎える学生のみなさんへ」のご講演と質疑がなされました。続いて,大阪ガスリキッド株式会社常務取締役社長陶国昇様(化学工学科S58年卒,S60年修了)による「私の財産」と題したご講演と質疑が行われました。講演会では本学を卒業してから現在までの仕事の内容,国内外での仕事に対する姿勢やビジネスパートナーとの接し方,海外でのものづくりを如何に行うか等について,先輩から後輩に向けてのアドバイス等が行われました。坂本様は「学生時代には何か夢中になる経験をし,自分の知見と感性を磨くこと」を,陶国様は「何事も信頼とチャレンジ精神が大切」と,自らの経験談を交えて説かれていました。学生からの様々な疑問に答えていただき,今後の進路を考える上で大変参考になる良い機会になりました。
第2回就職支援セミナーは,H31年2月14日(木)13時から14時30分に理工学部共通講義棟4階K407教室において,教職員?学生約30名が参加して開催されました。講演者として,森税理士事務所所長の森一郎様(知能情報工学科H5年卒)をお招きし,「私の夢」と題したご講演と質疑応答が行われました。講演会では,本学を卒業後,スポーツ用品大手メーカーのミズノ株式会社に入社してからの仕事内容,特に重要だったことが「人脈形成」であり,それが現在の大きな財産になっていることなどを熱弁していただきました。また,「中小企業を支援したい」といったご自身の「夢」を達成するために,心機一転,税理士資格取得を目指し,税理士事務所を開設した貴重なご経験,特に自分の「夢」を持ち,それを達成するための「起業のススメ」を後輩へのアドバイスとして伝えていただきました。参加した学生のほとんどが,目を輝かせながら聴講しており,学生の就職の意識や起業への熱意も高まったようでした。ご講演終了後も起業家を志す数名の学生から質問責めにあったようですが,時間をかけてご丁寧に対応していただき,学生にとって大変貴重な話が聞けたことに感謝しております。
第3回就職支援セミナーは,H31年2月22日(金)に総合研究実験棟3階院生研究室(2)において,光関連技術のベンチャー企業であるパイフォトニクス株式会社の創業者で代表取締役社長である池田貴裕様(光応用工学科第1期生H10年卒,博士前期課程光応用工学専攻H12年修了)をお招きして開催いたしました。「人と人をつなぐ光「ホロライト」-安心?安全?面白い?新しい光の使い方-」の題目で,教職員?学生約25名が参加し,講演と質疑応答を行いました。
就職した業界トップの企業より支援を受けたベンチャー立ち上げの経験,高輝度LED を光源とし指向性の高い光を放射する先端技術を生かしたローテク製品であるホロライトの紹介,顧客や展示会来場者の声を聞きながら用途開拓とバリエーション開発を行うベンチャーならではのスピード感あふれた事業プロセスに関して,熱のこもったお話をしていただきました。起業家として「人生一度,恐れずやってみること」をモットーに,世の中のために自分をどう生かせるのかを考え,未来に夢を持ち続けて努力を重ねることの重要性と,そしてそれらが明確な状態で仕事をする楽しさを,学生に伝えていただきました。
工学部は理工学部理工学科という一学部一学科体制となり,第4期生を無事迎え入れることができました。また,来年度からの大学院学生の受け入れのため大学院の改組を進めています。今後とも,様々な面で工業会会員の皆様方に協力していただくことが不可欠と思われます。誌面を借りてお願い申し上げる次第です。また,本セミナー開催に関しては,ご支援くださった関係各位にお礼申し上げます。